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シングルマザー卒業と独りよがり小説

小説1

投稿日: 2024年10月27日

帰り道、その文房具屋について検索したが、ホームページがあるわけもなく、何も出てこなかった。それもそうだ。40年も前の店。その時で店番をしていたのは結構なおばあさんだった。

それにあんな僻地、駅まで出なければ何もないような田舎だ。もしかしたら学校の中に移転でもしたのかも。なんにせよ、もう私には関係ない。

 

「でもさあ、妄想するにしたってなんでわざわざあそこだったんだろうね」

ユキが言った。

「あなた何か知ってるんじゃないの?そのそも手紙書いたのはあなたなんだし」

「たしかに。」

ふふっと笑って車窓に目を向けた。

 

いつも会社から帰宅する時間に家に着いた。さあ、明日からまた自分のために働きますか。

そう思って玄関のドアを開けると、ふわっと風が顔にあたった。

 

「おかえり」

「え」

 

娘がいる。お金ですか?そういう時しか家に帰ってこない。というか、頼む相手違うだろ。こっちにくんな。

疲れもあってイラつきながらリビングへ入ると、娘が台所にいた。

 

「あんた何やってんの」

「え?」

「わー!今日は何?煮物じゃん」

「え?」

 

ユキのやつ、食べ物に興味があるのか。

手を洗いに全面所へいって鏡をみた。まさしく私だ。ユキは映っていない。

 

「あんま喜ばないでくれる?」

「え、なんで。あれ、気づかない?」

ユキが言うので、何を?と、そこで歯ブラシが2つあることに気づいた。

「え、まさかあんたの?」

「まさか。」

よくよく見渡すと、何かが違う。ここは私の家なのに。何かこう、娘がいたころのままというか。

 

「え?まさか過去に戻ってる?」

「たぶんそうじゃないと思う。今が変わったってことじゃないかな」

「どういうこと?」

 

「お母さん、何してんの。旅行、どうだった?」

娘がきた。あわててリビングに入る。リビングも昨日家を出た時と違うじゃないか。どうなってる?少し動揺しつつ、テーブルについた。煮物とみそ汁、ごはんとビールまである。あたかもいつもと同じように夕食が始まる。楽しそうに会話する親子。

 

だがそこに私は居なかった。

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