小説0
投稿日: 2024年12月7日
10分くらい待っただろうか、早いのか遅いのかはわからないが、ジョシュアが血相を変えてやってきた。あれ、マジで邪魔したのかもしれない、と一瞬不安になったが、人目をはばからず抱きついてきたので大丈夫だったのだろう。
「ファーストクラスなんて乗れるわけないでしょ」
「だからって変更する?」
私に恩を着せられなかったことがくやしいのか、少々喧嘩してるみたいになってしまった。久しぶりに会ったのに、一週間ももつかな。
変なことを考えながら控室までついていった。他の三人も飛びついてきてくれた。さすが。こんなに歓迎されると嬉しいのを通り越して怖くなってくる。ジョシュアが不満そうに私を彼らから引きはがした。これから通しでリハーサルをするからみてくれと言われたが、疲れているからと断った。
「じゃあなんで来たんだ」
とぼそっと言われて、思わず、
「は?あなた喉の調子が悪いのでは?」
と言い返したら、思い出したかのように手を打ち、
「お願いします」と言ってきた。
喉、関係なかったか。私はやっぱり騙されていたのだと気づいた。まあ、もう来てしまったのだからどうでもいい。
ホテルの場所を聞いて、先に休んでいることにした。
「部屋は変更しないでね」
と釘をさされ、どんなスーパーな部屋なのかわくわくしたが、洒落にならないくらいの部屋だった。
というオチだ。でも一週間過ごすには快適そうだ。
日本の分譲マンションの玄関よりも広いスペースがあり、そこを抜けるとやっと部屋に入れる。広いリビングの脇には大きなキッチンがあり、冷蔵庫やレンジ、いわゆる普通の家のキッチンがあった。その横にバスルームがあり、寝室がいくつあるかはとりあえず数えなかった。
私は部屋の片隅に荷物を置いて、中身を出した。シャワーを浴びたら眠気もなくなり、彼がくるまでぶらぶら外を歩こうと、ラフな格好に着替えてホテルのロビーへ降りた。
だがエレベーターを降りて人ごみに紛れた瞬間、嫌な予感がした。なんだろう、この感覚。ものすごい殺気が私に向かってきている。これは、まずいかもしれない。空港では無視した違和感が、ここにきてかなり大きくなっている。誰かが私を狙っている?確かめなければ。
覚悟を決めてホテルから出た。しばらく歩いたところに商店街っぽいところがある。そこでウィンドゥショッピングでもするつもりだったが、もう少し広いところに行くことにした。
すぐに公園みたいな広場を見つけ入ったが、そこもまた出店もあって人でにぎわっていた。私は適当においしそうなパンを見つけ、ショーケースを眺めた。正確にはショーケースに移る背後を確認したかったのだが、人が多くて認識しづらい。それでも確実に見えたのは一人の女だった。
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